右手にブラウニー、左手に鮎

 

・唐突にブラウニーを作りたくなってレシピを調べまくっている。重くて一切れで胸焼けしそうな、くるみの入っていないチョコレートケーキを食べたい。

 

・くるみは好きだけど、ブラウニーには入ってなくてもいいかな〜と思っている。入ってて欲しくないというより無くても支障ないですくらいの気持ちなんだけど、同じ理由でトップスのチョコケーキのくるみも入ってなくてもいいかな〜と思っている。でもトップスのチョコケーキが好きな人からするとあの香ばしさと食感のアクセントがいいらしい。過去に一度スポンジとクリームだけでもいいかも、とこぼしたら過激トップラーにしばらくつつかれた。

みんな一度は食べたことある長らく愛されている商品なので、誰かの地雷をうっかり踏まないよう外ではあまりこの話をしないようにしている。
あのくるみ、噛みどきを忘れてたまに口の中でくるみだけコロッと残っちゃう時があるんだけど、みんなそうならないのかな。

 


・昔(といっても10年以上も前の話だが)2ちゃんねるの喪女板を見ていた時期があった。なぜ喪女板を覗くようになったのか、そもそも喪女という単語をどう知ったのかその辺の記憶が全然ないんだけど、とにかく高校生のわたしは恋人いない歴=年齢の人たちが集まるその板が好きだった。

 

・大体徘徊ルーティンに入れてるスレはチラシの裏、人に言えない苦手なものを書いてくスレ、読んだ本を報告するスレ、ダイエットスレ、みた夢を書いてくスレ、好きな芸能人を語るスレ、オフ会開催スレあたりだった。
ほぼほぼ記憶が薄れているので定かではないが、それぞれのスレの空気感とか書き込み内容はなんとなく覚えている。

 

・オフ会スレは募集内容や開催報告を読むのが楽しくてよくアクセスしていた。一度「つんくさんプロデュースのお好み焼き屋さんに行く人募集、4名ほどを予定」とあって無性に行きたくなり書き込み主とコンタクトを取ったことがある。が、日程が近づくにつれて知らない人と鉄板を挟んでコミュニケーションを取るハードルの高さと考え無しに名乗りを上げてしまったことの重大さを感じ、結局間際になって盲腸になったと嘘をつきドタキャンした。その後スレには主催と思わしき人からの「1人キャンセルになり3人でお好み焼き食べてきました」なる書き込みがあり、それを確認して以降オフ会スレには足を運ばなくなった。ドタキャンしたの申し訳なかったなあ、多分仮病なのも伝わってただろうなあ、と時々思い出しては心臓がキュッとなる。

 

・あとは好きな芸能人を語るスレもちょこちょこ覚えている。好きな芸能人の妄想話を語るスレだったかもしれない。当時なかなかの確率で列挙されていた芸能人は加瀬亮大森南朋松田龍平安藤政信あたりで、わたしは安藤政信の存在をここで知った。岡田准一も人気だった。
「ここ見てると好きな俳優ばかり出てくるwww喪女受けする俳優www」みたいな書き込みがあって、加瀬亮松田龍平大森南朋が好きだったわたしも「それな」感覚で「>>〇〇 同じく」とかレスしてた気がする。いてて

 

・映画やドラマで安藤政信を見かけるたびにこのスレの存在を思い出しています。

 

チラシの裏もかなり好きだったな。今日の晩ごはんはカレー!みたいな報告もあれば、あのババアまた仮病使いやがって、といった恨み節もあったし、はあ…どきどきする…明日で全てが決まる…みたいな全く内容を特定できないものもあれば、ここはお前のmixiか?ってくらい仔細を綴った書き込みもあった。チラ裏だけは全く統一性がなくフリーダムで、今で言うTwitterの@tosのような感じかもしれない。とにかくみんなが個々に壁打ちしていて、どこまでも許される空間だった。

 

チラシの裏ってどこから来て定着したワードなんだろう。2ちゃんねる発祥なのかな?チラシの裏って落書きとか走り書きのメモみたいなニュアンスだけど絶妙に読みたくなるあの感じがモロ再現されていてすごくいいな〜と思っている。

 


・「影裏」という映画を観ました。
図書館の小説コーナーを眺めていたらふと目に留まったのがこの作品で、そういえば映像化されていたなと思い、本を読むより先に映画を観ました。

 

・事前に内容を一切入れずに追ったので謎解きパートに入ってからはいつドカーン!と爆弾が落とされてもいいようにずっと構えながら観ていた。爆弾はなかったけどチリチリ燃えたあとの燃え滓がずっとこびりついてるような映画でしたね。

 

・空気感はすごく好きなんだけど、ところどころあまり好みじゃない描写とかもう少しぼやかしてよ…と思う部分もあって、この言いようのない不完全燃焼さは本のほうで消化したいなと思う。

 

・と思ったけど原作を読んだらわたしの中でもっと物語の輪郭が歪んでしまった。児童作品じゃないんだからそんなに親切に描かなくても…と思っていた映画の部分が原作だと今度は小難しく遠回りな描写がされているので本を読む才能が少ないわたしは映像やシーンのひとつひとつを思い出し当て嵌めながら読むしかなかった。

 

・小説自体は短くて1時間程度で読み終わるけど、これ原作を先に読んでたら途中で投げ出しちゃってたかもしれない。映画の想像や考察のいらない作品作りに助けられた。

 

國村隼さんの演技おっかなかったな。頑固で情に厚くて一本筋の通った田舎のおじさんの覚悟を決めた顔、めちゃくちゃ凄みがあって息を呑んだ。

 

綾野剛の演技もすごく良かった。世界中のみんなが綾野剛に落ちてもわたしだけは落ちない女でいたかった。もう落ちちゃった。

 

・おとなしい人がふとしたことで意地を張るシーンってなんであんなに可愛いんだろうね。松田龍平の小言をもういいじゃんと突っぱねたり遠回しに拒否されて悲しそうな顔したり仲間の輪に入っていけず居心地悪そうにする姿が好きすぎてそういうシーンだけ抜粋したものをずっと観ていたくなった。綾野剛おちゃらけた役も優しい青年役も謎多き役もこなすけどこういうジトッとして不憫な役が1番好きだな。色んな人の嗜虐心を煽ってきたんだろうなと余白を想像させる天才、犬になれと言われたらほんとに犬になりそうと思わせる天才。

 

松田龍平はいつも飄々としていて心情が読みにくかったり掴みどころのない役が多いけど今回も例に漏れず求められてる役をこなしていた。
映画レビューは「俳優陣が豪華でこれ以上ないキャスティング」と配役を褒める声が多かった。この手のキャラクターを演じさせるなら松田龍平を選んどきゃ間違いないって空気があるし今回もやっぱり間違いなかった。自分の型が決まっていて、ずっとそれを求められていて、それが長いこと飽きられていないってめちゃくちゃすごいな。

 

・原作、映画共に釣りのシーンが数々出てくるので釣りをしたくなった。川のせせらぎに耳を傾けながら鮎やヤマメの塩焼きを食べたいねぃ。